自分が嫌いでなぜ悪い

27歳会社員 いまだに「意味」とか考えちゃう

あの日電車に飛び込んだのは私だったと思う(中)

朝起きた瞬間から、疲れていた。体が重くて、起きるのもしんどい。

 

それでも20分で身なりを整え、会社に向かう。始業の3分前の出社になることもしばしばあった。

 

休む、という選択は不思議と浮かばなかった。休んでも私のノルマが減るわけではないので、残りの日数で受注をとってこなければならない。

 

朝、朝会の前には社歌をフロア全員で歌うが、その音楽が流れ出しただすと、ツーっと涙が出てくるようになった。何も悲しくないのに。あまりにも突然なので、びっくりしてしゃがんでカバンからハンカチを出して涙を拭く。

 

外回りに出かける前に、メールを処理する。感情を伴わない作業なのに、また涙が出てくる。トイレに立って、泣いてもいいが、泣いてもノルマが減るわけではないし、むしろ外回りの時間が減るだけだ。涙が出るときは鼻水も出るから、グジュグジュいいながらパソコンに向かう。朝からそんな感じなので、周りの先輩も迷惑だったろうと思うと申し訳ない。そんな先輩たちもけっこうな数字を課されてパンパンなので、「大丈夫?」などと言える状況ではない。

 

毎月の数字は相変わらず達成できなくて、月末が近づいてくると、上司につめられる。できていないから当たり前だ。

 

行き帰りの電車の中では、転職サイトを眺めるようになる。本当に活動をするためではなく、眺めていると「ああ、世の中にはこんなにたくさんの仕事がある。私は今の会社でダメになってもいいんだ」と思って楽になるからだ。精神安定的な役割だった。

 

新人なのに、笑わないし喋らないし脈略なくタラタラと泣いてばかりいる。数年ぶりに入った新人がそんな状態で、先輩たちも鬱陶しかったのではないだろかと思う。

 

自分が売らなければいけない商品に対しては、なんの愛着も熱意もなく、「受注がもらえればなんでもいい。人気商品でも廃盤寸前のものでもどっちでもいい」とさえ本気で思っていた。営業という仕事は、売りこむ商品やサービスのことを、自分自身でも心から「いいものだな」「もっと多くの人に知ってほしいな」と思っていないと厳しい。……当たり前のことだけれど、本当にこれに尽きると思う。

 

「明日行ったら辞めよう。明日行ったら辞めよう」

 

そう思って毎日暮らしていた。

どうしてこんなにしんどくなってしまったのかが分からないから、どうすればまた以前のような状態に戻れるのかもわからない。つらいのは私だけじゃないのに、こんなことで大丈夫? 私。

 

12月になったある日、担当の地域を一通り回り終えて、夕方になった頃だった。その頃にはもうなかなかの無感情状態で、死にたい、楽になりたいとばかり思っていた。「会社辞めたい」というよりも「死んでしまいたい」という氣持ちのほうが勝っていたと思う。

ただ、実際に行動を起こそうと思ったことはなかった。なのに。

 

 

(中)に続く